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近視とは
近視は現代の重篤な問題であり、2019年12月に日本の小学生および中学生の裸眼視力における1.0未満の割合が、過去最高になったと、文部科学省が報告しました。2018年4~6月にかけて実施した全国の幼稚園児から高校生までの健康診断の結果に基づくデータをまとめた、平成30年度学校保健統計調査速報値によると、小学生の約34.1%、高校生ではなんと約67.1%が、裸眼視力1.0未満だったと報告されております。
文部科学省のコメントとして、スマホや携帯ゲームの時間の増加が一因とされています。しかし、これは親世代にもあてはまることから、子供にだけその時間を制限するというのは、国が積極的な政策を打ち出さない限り、環境的に難しいと考えられ、今後尚一層近視の子供は増えていくものと考えられます。
当院で行っている近視抑制治療
1.ミドリンMによる点眼治療(保険診療)
効果は弱いと言わざるを得ませんが、現時点で保険診療で行える点眼治療です。
2.特殊なレンズを用いた眼鏡処方(保険診療)
どうせ眼鏡をかけるのであれば、少しでも近視が進みにくくなるようにしたいという希望の方に提案しています。
通常の単焦点ではなく、弱い遠近両用をいれたレンズを用いることで調節負荷を減少させ、近視抑制効果を期待します。
3.遠近両用コンタクトレンズ(保険診療)
通常の単焦点のコンタクトレンズより、多焦点のコンタクトレンズの方が近視抑制効果があることが報告されています。近い将来には専門的に設計されたコンタクトレンズも市販される予定です。
随時取り扱いを始めていきます。
ただし、小学生には管理が難しいという欠点があるので、中学生になってからのオルソケラトロジーからの切り替えも有効です。
4.低濃度0.01%アトロピン点眼薬(マイオピン) (自由診療)
アトロピンによる近視抑制効果は、以前よりも確認されていましたが、散瞳するなどの欠点があり、一般的に広まることはありませんでした。
今回シンガポールで低濃度のアトロピンでも近視抑制効果があることが報告され、しかも散瞳などの目立った副作用もないことから、日本でも実施されるようになり、2019年には全国7大学での多施設共同研究の結果、近視抑制に効果あるという報告がされました※
※近視学童における0.01%アトロピン点眼剤の近視進行抑制効果に関する研究(ATOM-J Study)(外部リンク)
5.オルソケラトロジー(自由診療)
コンタクトをつけたまま夜寝ている間に、近視を矯正する方法です。ただ矯正するだけではなく、近視抑制効果があることも報告されています。
寝ている間だけの使用なので、親がしっかり管理できることが利点です。
1~5の方法を組み合わせることにより、さらに近視抑制効果を期待することができます。
近視抑制治療のポイント
近視抑制治療はあくまで近視の進行を遅らせるのが目的であり、一度進んだ近視が元に戻るわけではありません。
進行した状態から開始するよりは、軽度の状態で開始した方が効果が高いことが報告されております。
親・兄弟が近視が強いなどの遺伝的な要素も強い場合は、早期に治療を開始することが望ましいです。
近視の進行には生活環境も関与しているため、スマホや携帯ゲームの時間の制限、適正距離の指導、野外活動時間の増加などの日常生活習慣の改善に取り組むことも重要です。
資料参照書籍
診療で役立つ!近視進行予防のサイエンス 編集 坪田一男 金原出版